印籠の買取について

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印籠とは

印籠というと、時代劇の水戸黄門を思い浮かべる方が少なくないのではないでしょうか。実際、印籠は江戸時代を通じて大名や武士、そして裕福な町民が男の身だしなみを飾る小道具として使われていました。

印籠はもともと室町時代に中国から印章や朱肉を入れた小さな容器が源流であると言われています。
中国では官僚や文人は自分の手紙や書画に必ず印章を捺していたので、それを持ち運ぶ小道具も必需品でした。
しかし現在の中国では、当時の日本の印籠に似た印章入は伝わっていません。伝わっているのは印象と朱肉が入る豪華な装飾を施した小さな箱です。
一方、薬を収容する重箱のような手持ちの箱は比較的多く使われていました。実際に印籠は携帯用の薬入だったので、江戸時代は印籠の別名を「薬籠」と呼んでいました。そのため印籠は中国の印章入と薬箱をヒントに、日本で独自に制作された小道具との推測も可能です。
その証拠に、印籠は数種類の薬を小分けできるよ3~5段で作られ、その中に個別に薬が入れられます。当時も薬は決まった時間に服用しなければならず、印籠のような携帯用の小箱に入れて持ち歩けば出先でも薬が服用できます。
その実用性の高さから、室町時代に製作された風俗画には既に印籠らしい小道具を腰にぶら下げている武士の姿が描かれています。

江戸時代になると太平の世が続き、町民文化が栄えます。
江戸時代は、上は大名から下は一般庶民まで、いったん火事が起これば燃え広がり家財一切が灰になるような住環境だったため、実はあまり家財を所持する習慣がありませんでした。その中で大事な薬を携帯できる印籠は、煙草入と共に裕福な身分の人々が自分の存在をアピールできる数少ない小道具兼装身具でした。
そのため徐々に本来の目的から外れて装飾品として発展していき、趣向を凝らした豪華な印籠が作られるようになりました。印籠は大名の礼装の必需品だったので、諸大名は蒔絵師に螺鈿や金銀の象嵌を施した絢爛豪華印籠を作らせ、自らの持ち物として鑑賞し、贈呈品とても使用されました。
特に大名御用達だったのが古満家と梶川家で印籠の有名ブランドとして名を馳せました。
一方で裕福な町民たちは、漆器以外にも木や竹、金属、陶磁器、ガラス、象牙など様々な素材や装飾技法を用いて印籠を作り、その個性を競い合いました。しかし明治維新後、人々の生活が西洋化して行くと共に、着物の帯に引っ掛けてぶら下げる印籠の役割も終わりを迎えます。

このように印籠は装飾品として発展したため高価な素材が使われている場合が多く、美術品としての価値も当然高くなります。
また意匠は和漢の物語や機智と洒落が効いた表現が多いので、日本はもとより海外にも数多くの印籠コレクターが存在しています。印籠は日本の美意識と職人芸が凝縮された掌の美術品と言えるでしょう。

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